新たなミュージアム像の探求 その5

7100形 蒸気機関車 『義経』号  
7100形 蒸気機関車 『義経』号  

~フィーチャー・オブ・ザ・ミュージアム~

 

 1980年代の後半、コンピュータも身近になり、それまでビジネスを行う上での業務用機器が、私達にもプライベートに使える様になりつつあり、同時に、コンピュータという今までとは全く違った「考えてくれる機械」をどう捉え、どの様に扱っていったら良いのか、という研究も始められようとしていました。

 

 その頃の「数理科学」という研究誌に、「認知科学という学問はどのような科学なのか」という内容の論文が掲載された事がありました。

コンピュータのあり方が多角的にアプローチされつつある時期でもあり、コンピュータの研究にも、人々の「認知」そのものの研究から説き起こす必要が生まれてきた訳です。 

 この様な時代背景の中、「アクティブ・ミュージアム」で出会ったのが、先にご紹介しました「音楽」をテーマにしてコンピュータを使った教育についての研究をしていた私的研究グループでした。

 

「考えてくれる機械」としてのコンピュータそのものに対する興味。

「ハード」や「ソフト」と言った面からではなく、コンピュータという機械をどう捉え、どう活用していったら良いのかという人間の認知活動。

 

 つまり、「マインド・テクノロジー」といった視点からアプローチするという研究の方向であり、それは、同時にミュージアムへの探求の視点と同じでもありました。

 

 ミュージアムという世界に、コンピュータというバーチャルな世界が導入される状況や、デジタルな世界をどう捉え、融合を図ればよいのか・・・・。

 また、そういったコンピュータ社会の中で、今までと同じ博物館の捉え方で良いのか、博物館の概念をどう考えれば良いのか・・・・。

 

 どうも、コンピュータとミュージアムとは、 情報が内在化されている点や、どちらも学び手、つまり、操作する側や観覧者側からアクセスする事で、自らが求めている情報や機能が引き出される点など、「フィーチャー・オブ・ザ・ミュージアム」の姿は、コンピュータの世界を見つめる事で、違った角度・視点から見えてくる予感が生まれました。

 

コンピュータ文化を通してミュージアムを考える・・・・。

 

 これが、私のミュージアム研究への最初の出会いであり、新たなミュージアム像との邂逅の瞬間でした。

 今回以降は、次のフェーズ、ミュージアムとの邂逅記を、認知や情報論、あるいは、現代社会の動きと重ね合わせながら、 フィーチャー・オブ・ザ・ミュージアムの姿を、「現代ミュージアム考」としてその時々のテーマを設定しつつ引き続き綴っていこうと思います。

 

写真説明/

アメリカから輸入された7100形蒸気機関車で「義経」と言う愛称で呼ばれていました。

交通科学博物館の閉館にともなって、同機ほかの実物車両や貴重な博物館資料が、京都の現・梅小路蒸気機関車横に開設される新しい博物館に移設され、新たな使命をあたえられることになりました。

下の写真は、後輩の職員が送ってくれたもので、現・梅小路蒸気機関車館の転写台に乗せられた「義経」です。